【今日の記事のキーワード】
・吹奏楽でピッチ合わせ(音程調整)をする?
・正しいピッチ合わせの方法と概念とは?
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こんにちは。
ラッドミュージックスクール学長の瀬戸郁寛です。
今日は吹奏楽やバンドでのピッチ合わせ、いわゆる音程合わせの方法などを語っていきましょう。
いきなりですが・・・
練習前のピッチ合わせ(音程合わせ)は全て無意味なのでやめた方が良いです。時間の無駄です。その時間を他の練習に当てた方が1億倍マシです。
ハイ。いきなり結論から話してしまいました!
正しいピッチの合わせ方の概念は一番最後に語りますね。
吹部やバンドで練習前にピッチを合わせることはなぜ無意味であり時間の無駄なのか?考えられる全ての理由を箇条書きにします。
1、個々の楽器の特性上、単音単位で必ずピッチが変化するので意味なし
2、フレーズ全体で本来ピッチを合わせるべきだが、そんなのはコンピューターにしか解析できないので意味なし
3、曲中のアンブシュアや息の残量でピッチが変わるので意味なし
4、楽器が温まったり冷えたりしたらすぐにピッチが変わるので意味なし
5、バンドやアンサンブルで生ピアノがある場合、ピッチが狂っていたら修正不可能なので他の楽器のピッチを合わせる意味なし
6、ピッチが仮に狂っていても他の要素で十分にカバーできるので意味なし
7、室温や外気温にモロにピッチは左右されるので意味なし
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そしてチューナーを使うことについて考えてみよう。
1、チューナーは単音しか出せないので精神的にそのピッチにアンブシュアを合わせに行ってしまうので意味なし
2、フレーズごと平均的に解析してくれるチューナーなど存在しないので意味なし
3、チューナーに頼ると常にチューナーを監視することになるので耳が育たない
4、チューナーは相方の生ピアノのチューニングを測ることは不可能
5、チューナーが正しい!と言えば正しいだろうと思うマインドセットが育ってしまう
それでは本題。どのような方法が正しいピッチ合わせ、音程合わせなのか?
1、ピッチは常に個人練習で「このあたり」と覚えておいて、黙って一人でそこに合わせるべき
2、他人のピッチがずれていても、しばらく様子を見てみるべき
3、自分の楽器の癖を把握し、大まかに低音、中音、高音で自分のピッチを知っておくべき
4、あまりにも気温等に左右された場合のみ自分で黙ってピッチを調整すべき
5、時間が経ってもアンサンブルやバンドの特定メンバーのピッチが悪いと判断した時のみ助言すべき
6、440なのか441なのか442なのか?レコーディング時には確認すべき。事前に他の楽器が既にレコーディングを終わらせている場合、その数値の律に合わせるべき。(既にレコーディングが終わってるトラックの音程に耳を使って合わせてしまうと、ミックス時に音程を変えられてしまって、ズレる危険性がある)
7、ライブやアンサンブルの場合は律に関係なくピアノに合わせていくべき。なぜならピアノは音程をその場で調整は不可能。
8、最終的には耳を使って全体的にピッチを調整すべき。単音なんかでは100%一生合わせることは無意味で不可能。
9、どうしても楽器のピッチが狂って修正不可能な場合、諦めて新しい楽器を買うべき。(自分の演奏法に非がない場合のみ)
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ちなみにポップスやジャズのライブの現場で、事前のピッチ合わせ(音程合わせ)をやったことは僕は一度もない。世の中に出回っている音源のレコーディングにおいても一度も僕はやったことない。テレビやラジオに出演する時も一度もやったことがない。だって意味ないから。
たとえばエレキギターやベースを演奏する方々にとってはある程度意味があるのだろうが、正直言って個人個人のフレットの押さえ方のクセや強さ、そしてネックの状態などによってピッチはあれよあれよという間に狂って聞こえてくる。
だからどの楽器もピッチを【初めの段階で単音で合わせる】ことがことごとく無意味なのである。
要するに、ピッチを合わせるというのはひとりひとりの平均的な音程を全体的に馴染みやすい場所に持っていくということなのです。単音単音がズレていることはそこまでだめにならず、例えば全体的にピッチが高く聞こえる、低く聞こえる、という感じに相対的に捉えるのが正解。
ピッチ合わせは経験が物を言う分野。
ピッチを気にする前に気にするべきことは音楽において100万倍あるので、そこまで気にせずにのびのびと演奏する方が良いですよ!
ちなみに・・・
過去に僕が一番納得したピッチ合わせの方法は、まずベーシストがピアニストに「A(ラ)の音を3オクターブちょうだい」と言って和音を弾いてもらう。その平均の響きでベースのピッチを修正していたこと。ベースの音程が確定すれば、他の楽器は非常にピッチを相対的に判断しやすくなる。唯一僕が過去に納得したピッチ合わせでした。
まぁそんな感じでみなさんも是非研究してみてくださいな!
それではまた!
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■著者について
株式会社Radwave代表取締役、ラッドミュージックスクール学長。ジャズを本気で教えて16年。
幼少期より海外で育つ。バークリー音大卒。ジャズに魅了され30年弱。映画音楽作曲やレコーディングなどを含め、多岐の音楽活動に携わる。ジャズが演奏できるようになる一歩一歩の自己成長プロセスに感動し、それを伝えるべくラッドミュージックスクールを立ち上げる。耳が良すぎてジャズ理論はほぼ全て耳から習得。特技は他人が演奏したフレーズを1音残らず瞬時に分析する力。最近はジャズ以外のレコーディングやライブに多く携わっている。現在は日本とマレーシアを行き来しながら音楽活動を行う。ちなみに生業の一つとして芸能界の英語通訳もしている。好きなものはビールとドリアンと未知へ切り込む冒険心。
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